27201811月
母篇 第6話 妊娠中のお口トラブルむし歯

母篇 第6話 妊娠中のお口トラブルむし歯

うつってしまうの!?母のむし歯菌
うつります。でも心配することはありません!なぜなら……。

むし歯の原因菌として有名なミュータンス菌は、生まれたばかりの赤ちゃんの口には存在しません。なぜなら歯がないから。ミュータンス菌が住みやすい「歯と歯のスキマ」が存在しないから住み着くことができないのです。
生後19~31か月ごろになると20本程度の歯が生えて、ミュータンス菌が好きな歯のスキマができてしまいます。そうなると、大人から子どもへ唾液を介してミュータンス菌がたやすく感染してしまうのです。これは、アメリカの研究者コーフィールドらの研究(※1)により明らかにされています。

しかし心配はいりません。以下の図を見てください。

むし歯菌は誰のお口のなかにもいて、そしてほとんどの場合、そのむし歯菌は母親から伝播されてきていることは紛れもない事実です。コーフィールドは、研究者としての使命から赤ちゃんのお口のむし歯菌の出所を調べたのですが、それが世のお母さんたちの心配を煽るように情報操作されてしまい、たくさんのお母さんたちが心を痛めているのが現状です。けれど、お口の中にむし歯菌がいるからといって、必ずしもむし歯ができる訳ではありません。実際には図が示すように、たくさんの要因が関連してむし歯ができるんです。「私のせいで……。」と悲観的にならないで大丈夫なんですよ。


では、甘いものはいつからあげていいのかしら?

上で取りあげた図表のなかでも、むし歯と一番関連が強いのは『間食中の砂糖量』です。
つまり、むし歯と食とは大きく関連しています。歯みがきはあまり関連が強くありません。人は本質的に、栄養価の高いものを好むようにできています。砂糖と脂肪分ですね。
スタバのフラペチーノなんてそれの際たるものです。これは、人類の先祖が代々飢餓と戦い続けてきた歴史が遺伝子に刻まれているためと言われています。
でも甘党派もいれば、そうでない人もいる。これには理由がありそうです。
就学前の子どもたちを3つのグループに分けて、異なる味の豆腐―プレーン、砂糖がけ、塩がけ―を食べさせたところ、子どもたちは遺伝子に関係なく、最初にたべたものをもっとも好むようになったという研究(※2)があります。
また最新の研究では、妊娠中や授乳中にお母さんが食べたものの成分が赤ちゃんの飲む羊水や母乳成分に影響を与えるので、「妊娠中からバラエティ豊かな食べ物を食べることこそが、子どもの豊かな味覚の形成に役立つのだ」という報告がなされています(※3)
元々人間には甘いものを好むように設定されていますが、この度合いは育て方により調整が可能のようです。赤ちゃん期から甘いものを与えて育てると甘党になりますが、甘いものを含めて『いろいろな味』を体験させてやることで豊かな味覚を身につけることが出来るのです。人生も豊かになると思いますよ。『いろいろな味』を体験させる順番は、人工的に(砂糖などで)甘く味付けされた加工食品よりも、自然な有機野菜の甘味(人参やトウモロコシなど)を先に体験させてやるのがおすすめです。


結局、子どものむし歯を防ぐにはどうしたらいいのよー?

「むし歯菌がうつるかもしれない・・・」「甘党になったらどうしよう・・・」など思い悩まずに、こどもに食べさせてあげたいものを、お母さんが自信をもって食べさせてあげてください。それが砂糖ばかりだとむし歯になるかもしれませんが(笑)。そんなことはここを読んでくださっているお母さんたちは多分されないと思います。
スマホの情報だけに頼らずに、自信をもってお母さんの野生の勘で子どもの食をリードしてあげれば、子どもはきっと食べることの好きな元気な子に育ちます。あっ!赤ちゃんにハチミツはダメとか最低限のルールは守って下さいね。よろしくお願いします。
そして、むし歯菌の感染を気にせず、いっぱいベタベタしてあげてください。
どうしても心配でしたら、歯科でお母さんや子どものむし歯菌の量を調べることもできますので、ご一緒にご来院くださいね。親子で歯医者に通って一緒にお口をケアしてもらうなんて、とても素晴らしい親子体験だと思いますよ。

出典
(※1)P.W. Caufield et. al. / Initial Acquisition of Mutans Streptococci by Infants: Evidence for a Discrete Window of Infectivity .1993
(※2)Sullivan, Susan et. al. / Pass the sugar, pass the salt: Experience dictates preference.1990
(※3)Alison K.Ventura1 / Early Influences on the development of food preferences.2013



Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *