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母子篇 第7話 抱っこについて-後半

母子篇 第7話 抱っこについて-後半


種類が豊富な抱っこ紐、あなたはどんなタイプを選びますか?

抱っこ紐といえばバックルタイプやスリングを思い浮かべるかたが多いと思いますが、実は、抱っこ紐は種類がかなり豊富にあります。また最近は、欧米のベビーウェアリング(抱っこ)ブームの影響もあり様々な種類が日本で手に入るようになりましたが、その進化が目覚ましくアジャスターなどでの細かな調整が可能になってきた一方で、直感的に使うことが難しくなっていると感じます。結局は靴と同じで、「人間工学に基づいている」とか「助産師監修」と説明書きがあったとしても、試着してみなければ本当にあなたに合う抱っこ紐かどうかはわからないのです。

今回は、
・赤ちゃんの自然な姿勢が保てるか
・親子双方にぴったりフィットする調整力
・体重分散やクッション性などのサポート力
の3つに着目して、抱っこ紐の種類をいくつか見ていきたいと思います。

リングスリング/スリングタイプ

【スリングタイプ】は、片方の肩に吊り下げて使うタイプの総称です。両肩タイプと比べるとサポート力は劣りますが、保育園の送り迎えなど、抱き降ろしが頻繁に行われる短時間の使用にはおすすめです。

スリングタイプの中でも、2つのリングが縫い付けられているのが【リングスリング】。調整力抜群の一枚布タイプの特性を持ち、素早く抱き降ろしができる優れものです。実はリングスリングは
・肩パットの有無
・布の上下の綿の有無
・布の幅、厚み、素材
・リングのサイズや素材
などたくさんのバリエーションがあり、使い心地も実に様々です。おすすめは、ベビーラップメーカーが作っているもの。布の特性をよく知った上で作ってあります。

スリングタイプにはベルトで調整するものもありますが、実はこれは低月例のお子さんに用いる際には特に注意が必要です。抱く高さの調節はできますが、赤ちゃんの自然な姿勢を保つように背あてを調整することが難しいので、顎を引きすぎて呼吸困難になる可能性が。もしこのタイプをもっているなら、大きくなってから縦抱きでの使用がおすすめです。

また、輪っか状になっている【パウチタイプ】にも同じことが言えます。調整ができないものは、サイズを上手に選んでも親子双方にフィットすることが難しいので、片手を添えることが前提の補助具と認識しておきましょう。お子さんが歩き出してから、抱っこをせがまれた時のため用に、そっとカバンに忍ばせておくと便利です。

両肩タイプでも調整するところがない抱っこ紐がありますが、その場合も同じくサイズチェックが命!です。サイズが合っていないと大人がしんどいばかりか、お子さんの健全な発達に関わるので要注意です。
サイズの見極めポイントは「膝裏から膝裏まで背あてで支えられていること」、「深く座ったコアラ抱っこの姿勢が取れること」、「両肩をすっぽり包めるだけの背あてがあること(短時間使用の場合は足りない分を片手で補助)」この3つです。




バックルタイプ

【バックルタイプ】は、両肩タイプでは最もポピュラーなもの。なじみがあるお母さんも多いですよね。最近では新生児から抱っこできるものも販売されていますが、新生児といっても体格は様々。試着してみて、理想的な姿勢が保てるかどうかが選ぶポイントになってきます。新生児は横抱きというイメージがありますが、赤ちゃんの把握反射やM字姿勢はしがみつくために備わった能力なので、そのような赤ちゃんの本能が発揮される縦抱っこは学術的に多くのメリットがあることが分かっています。




ベビーラップ

気になるけど難しそう!という声をよく聞く【ベビーラップ】。確かに練習は必要なのですが、ひとつの巻き方さえ覚えれば赤ちゃんの成長にあわせて包むことができ、また風呂敷のようにどんな体格の大人と子どもでもぴったりフィットして抱っこすることができます。また、布の面積と摩擦力によって体重を大人の上半身全体に分散するので、肩こりや腰痛持ちの方には特におすすめです。

ただし、注意が必要なのは「織物性」と「ストレッチ性」の2タイプがあること。
ストレッチ性のベビーラップの方がお手頃価格で装着も簡単そうに見えるのですが、ストレッチタイプの中にはスパンデックス※が入っているものがあり、靴下のゴムのように伸びきってしまう可能性があります。メーカーによって一概には言えませんが、お子さんが大きくなってくるとサポート力に物足りなさを感じる場合が多いです。また、ストレッチ性のものは編み物なので目が詰まっており、夏は大変暑く感じます。秋冬生まれの子であれば、ストレッチタイプはまだ未成熟な赤ちゃんの身体をやさしく包んでくれ、また寒い時期を温かく過ごせるので良いですね。
※スパンデックス(Spandex):ポリウレタン弾性繊維の一般名称。伸縮性に極めて優れていて、混紡率が低くても特性を失わないため、様々な繊維との組合せで使用される。
もし「おんぶもしたい」と考えているなら、織物性のベビーラップを選びましょう。首すわり後から高い位置でおんぶできる織物性ベビーラップは、赤ちゃんの発達を促し、大人には家事や趣味の時間を与えてくれます。

一枚布タイプの抱っこ紐には、他にも【兵児帯】や【さらし】があります。日本人の知恵によって、日常の道具を抱っこ紐として使ってきたもので、ベビーラップと比べると幅が半分、薄手のものが多いです。大変コンパクトになりますが、その分サポート力は劣ります。抱っこ専用でないものを使用する場合には、耐久性に注意してご使用くださいね!



メイタイ

一枚布タイプとバックルタイプの間をとったものが【メイタイ】です。新感覚の抱っこ紐かもしれません。装着はバックルタイプのように手軽ながら、布製ならではの微調整が可能で、親子双方にフィットしやすいです。後ろがクロスになっているので、体が硬い人にも安心ですね。腰ベルトがない分、高い位置でのおんぶもしやすいですよ。




まとめ

抱っこ紐は正しく使用すれば親子の絆を育んでくれます。大人は快適になり、そして赤ちゃんの心身の発達をサポートしてくれる子育ての頼れる相棒となりますが、使い方を誤れば健康を妨げたり、時には事故につながることがあります。

複雑になった抱っこ紐の世界には、すでに多くのコンサルタントが誕生しています。一度相談するだけで、赤ちゃんと過ごす日常、そして未来が変わるかもしれません。自分やお子さんにぴったりの抱っこ紐を見つけて、お子さんが小さい今だけの特別な抱っこの時間を、ぜひ、満喫してくださいね!


タカシマデンタルクリニック院長  高島 隆太郎よりみなさまへ

みなさま、抱っこについての前篇・後篇2つの記事、いかがでしたでしょうか。
今回、アドバイザーの堀内先生に、抱っこという文化の魅力と押さえるべきポイントについて詳しくご解説頂きました。このコンテンツが、多くの親子の喜びを支えるものへと昇華することを楽しみにしています。

最後に私から、口の発育と抱っことの関係性について解説します。
ご存知のように、ヒトは馬のように生まれたその日から歩くことはできません。ヒトの胎児は子宮で大きく育ちきると、二足歩行のためにコンパクトに進化したママの骨盤から出られなくなってしまうので、誰しも「1年間早く」お腹の外に出てきます。乳児期を「子宮外胎児期」と表現するかたもいるとか。 赤ちゃんは胎生28週には身体が大きく成長します。その結果、手狭になってきたお腹の中で以前より身体を丸めるようになり、この体勢が、羊水を飲んだり指しゃぶりをするなどの口の機能が活発になります。つまり、お口の最初の機能「羊水を飲む、指しゃぶりをする」は身体を丸める事で促されるのです。お腹の外に出た後も同様のことが言え、「第2の子宮」とも言われる心地よく体を丸めた抱っこの姿勢では、お口の成長が快適に進むことがわかっています。

ポイントを押さえた親子が快適な抱っこは」赤ちゃんが自ら育つ力を支えながら、お口を育てることにもつながるというわけです。 このコラムが子どものお口の育ちを促し、健康なお口と様々なところで出会える日を心待ちにしています。
高島 隆太郎



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