母子篇 第3話 こんなとき、歯医者に行く?行かない?
子どもの歯医者さんからのアドバイス!
こんにちは、高島です。今回の【母と子のお口の健康手帖】はコラム形式でお送りします。
このお話は、子どもを歯医者さんに連れて行ったことがないけれど、子どものお口で気になる事がある時に「これって歯医者さんにに行った方がいいの?」「特に行く必要はないのかな?」と迷った時に読んでください。
(0歳〜3歳の子どもを想定しています。)
「むし歯かどうか気になる」
「フッ素を塗りに行った方がいい?」
「歯やお口のまわりをけがした」
「歯並びが気になる」
この4つのお悩みについてアドバイスさせていただきます!
「むし歯かどうか気になる」
→気になりますよね!歯医者さんに行きましょう!ただ、これだけは知っておいて損はなし
お母さまやお父さまが、子どもの歯にむし歯があるかどうか判断するのは結構難しいもの。子どもって、口の中あまり見せてくれませんよね。むし歯かどうか気になったら、子どもの扱いに慣れた歯科医師に見せるのが良いと思います。
ただこれは知っておきましょう。最近の子どものむし歯は【激減】しているのです!
国が5年ごとに行う調査では、こどものむし歯は減っているというデータが出ています。そして3歳までは、9割以上の子にむし歯はありません(H28年歯科疾患実態調査 乳歯のむし歯より)。
そして、少数のむし歯になった子どもたちは、歯みがき不足でむし歯になったのでは決してなく、【お砂糖との関係】がうまくいかなかったせいだとわかっています。わかりやすく言えば【お砂糖の取りすぎ】なのです。
4歳からはむし歯が徐々に増える傾向にありますが、これは歯が完全に生えそろって、お口の中にむし歯の原因菌の住処ができたことや、多様な食習慣を身につけるなかで、お口に入るお砂糖が徐々に増加するためです。
つまり、0歳〜3歳までは、お砂糖の取らせ方に注意されている場合、むし歯がある可能性はかなり低いと言えます。 歯医者に子どもを連れていく場合は、「むし歯がないか見てもらう」のでなく「むし歯が無い歯を歯医者さんにチェックしてもらって褒めてもらう」つもりで、歯医者さんに遊びに行きましょう(^-^)。
「フッ素を塗りに行った方がいい?」
→まだ塗りに行く必要はないでしょう。なぜなら……。
突然ですが、サメの歯はむし歯にならないって知ってますか?
サメの歯は【フルオロアパタイト】という物質でできていて、例え陸上生活をしてチョコを食べまくっても、むし歯になりません。人間の歯は【ハイドロキシアパタイト】でできているので、そういうわけにはいきません。
実は、人間の歯をサメの歯のように強くする方法があるんです。そもそも、なぜサメの歯は強いのかというと、これは、海の中で暮らしているからです。海水の中には、むし歯予防で有名なフッ素が濃度にして1ppm(parts per million。1ppm = 0.0001% )程度含まれています。1ppmという低いフッ素濃度下では、【ハイドロキシアパタイト】が【フルオロアパタイト】に置き換わっていくのです。
このことから、むし歯予防で大事なことは口の中のフッ素濃度を1ppm程度に保つことだと言えます。 さて、現在市販の子ども用歯みがき粉には950ppmのフッ素が入っています。これを使って毎晩もしくは毎朝晩歯みがきすると、口の中のフッ素濃度が上昇し1ppmに近づくためむし歯予防効果があります。ただし、歯磨きが終わった後に水でゆすぎすぎると効果は落ちますので、うがいをさせる習慣をつけたい時は、うがいの後にフッ素のジェル(ゆすぐ必要はありません)を歯に塗りましょう。これも950ppmのものが多いです。
歯科医院で塗布してもらうフッ素の濃度は10000ppmと非常に高いのですが、一度塗っただけで半年後にまだ口の中のフッ素の濃度が高いかを考えると、そうではないでしょう。よって、歯科医院でフッ素塗布をしてもらう場合は、3か月の定期健診のたびに塗ってもらうような習慣をつけなければ効果は期待できません。 そして、歯医者で高い濃度のフッ素を時々塗ってもらうよりも、毎日フッ素の入った歯磨き粉やジェルを使用する方がはるかに効果は高いのです。
そういった意味で、歯科医院にはフッ素を塗ってもらうためだけに行くのでなく、歯の健康状態をチェックしてもらい、口がうまく育ってきているのかを観察してもらう目的で【定期的】に受診し、ついでに高濃度のフッ素を塗ってもらう、という感覚で良いと考えています。
「歯やお口の周りをけがした」
→可能であれば、できるだけすぐに歯のケガに詳しい歯科医師に見せましょう。
子どもは、成長の過程で失敗を繰り返して成長していきます。そんななか、歯やお口の周りを怪我することもまれではありません。
例えば、今転んで歯をぶつけたとしましょう。「ぶつけてすぐは血が出ていたけど、すぐに止まった」、「歯のぐらつきが特にない」、「子どもが痛がっていない」。このような状態だと、歯科を受診するか迷われるのではないでしょうか?仮に、私が歯科に関係の無い職種であれば……。多分連れて行かないと思います(笑)
なぜ症状は軽く見えても受診した方が良いのかを解説します。
転んで歯をぶつけた時には、【歯自体にヒビが入る歯のケガ】と【歯が脱臼する歯の周りのケガ】が起こります。
【歯のヒビ】は、見えるところに入る場合もあります①が、見えない根の部分に入ること②もよくあります。これはレントゲン写真を撮らなくては我々歯科医師でもわかりません。
根が折れていても歯のぐらつきがなく痛みを訴えない場合も多いので、専門家に見せてキチンと診査してもらう必要があるのです。
【歯の脱臼】は、ぐらつきが起こり痛みを伴う場合③が多いので分かりやすいのですが、歯をまっすぐにぶつけた時に歯が歯ぐきにめり込んでしまう【陥入】という状態④では、めり込んでいるために歯のぐらつきは生じません(!)。
元々の歯の位置よりもめり込んだ分だけ位置が変化しているので、ケガをする前の歯の状態の写真と比較すれば専門家でなくても判断はつくかもしれませんが、普通ご家庭で歯の写真なんて撮りませんよね。ですので、やはりこちらも専門家に診査をしてもらう必要があるのです。
また、【陥入】が生じると歯の周りの骨の骨折が高い確率で生じていますので、歯やお口の周りのケガは【すぐに専門家に見せる】ことをお勧めします。
ケガしてしまった歯や歯の周りは、1~3か月してから歯の神経が死んでしまったり何年後かに永久歯にうまく生え変わらないことが良くあります。ケガをしてしまった時は、信頼できる専門家に長期的なチェックをお願いすると良いでしょう。
「歯並びが気になる」
→
お口がうまく育てば育つほど歯並びは良くなります。お口を育てるアドバイスが受けられる歯科医院へ、早い時期から受診するといいと思います。
子どもの歯並びはよくあってほしいもの。しかしながら、最近までは子どもの歯並びが将来どうなっていくかについての議論があまり無く、いざ歯並びが悪くなってから治療をするという方法が多かったように思います。
子どもの歯並びを子育ての視点から分析してみると、規則正しい生活ができていて、お外でのびのびと身体を動かして遊び、上手に呼吸ができて、食べ物をよく噛んで飲み込めている子には、著しく悪い歯並びの子どもがいないという事に気づかされます。
歯並びはその子どもの身体の使い方により良くも悪くもなり、生活の状態により簡単に変化していくものと言えます。
近年は、子どもの生活の背景まで考慮して子育ての観点でお口の育て方についてアドバイスをする歯科医院も出てきました。子どもが小さい頃からそういった医院の協力を得て子育てが出来れば、矯正治療は必要ないとは言いきれませんが、歯並びが悪くなってから「どうしようか」困り果ててしまう状況は避けられそうです。当院もそのような立派なお口を育てるアドバイスのできる歯科医院を目指して研鑽を積んでおりますので、子どもの歯並びについて悩みをお持ちでしたり、綺麗な歯並びにしてやりたいという希望をお持ちでしたら、なるべく早い時期にご相談下されば幸いです。
参考文献:
平成28年歯科疾患実態調査結果 乳歯のむし歯(2016)/厚生労働省
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