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母篇 第7話 妊娠中のお口トラブル 歯にかかる力

母篇 第7話 妊娠中のお口トラブル 歯にかかる力




頑張っているお母さんは、奥歯も頑張っている⁉︎
お口のトラブルの原因は歯にかかる力

小説家の柳美里さんが『私の読書日記』で「目はその人の心を語る 口はその人の生活を語る 人はほんとに見た目による」と記しています。私はこれを読んで「歯科の専門家でないのにお口の真髄を踏まえていらっしゃる」とびっくりした覚えがあります。
歯科医師として人を口の中から見るといろんなことに気がつきます。社会との軋轢により擦り切れた歯、満たされない欲求は唇のしぐさに、怒りや悲しみは舌の状態に。目に見える形で現れる様々な状態から、いま診察で目の前にいる人が求めていることが第六感で感じ取れることも珍しくありません(眼科医も同じ思いをされているかどうかは尋ねたことがないので、現在のところ分からないでいますが)。
心と体の状態が現れてくる『お口』というものを毎日見ている歯科医師としては、その「人のお口を通じてそのかたをどうやったら幸せにできるか」という事を考えています。

子どもを歯科医院に連れてこられるお母さまから「私も実は歯の調子が悪くって」と歯のチェックをお願いされることが良くあります。お母さまがお口にトラブルを抱えていることは珍しくありません。痛みの原因がむし歯や親知らず周りの歯ぐきの腫れにあることもあるのですが、一番よく目にするのが『奥歯に力がかかりすぎていることによる歯の痛み』なんです。


実は、人は、歯と歯を食いしばることで
心や体にかかるストレスを発散できるようにできています。

歯には『食べ物を噛みちぎったりすりつぶしたりする食べる機能』、『上下の歯をかみ合わせて身体のバランスをとる機能』に加えて、『ストレスを解消する機能』もあり、すべて歯の大事な役割であると考えています。
妊娠から出産にかけて、お母さんはお腹の中から第2の子宮と呼ばれる抱っこ紐に至るまで、子どもをずっとずっと抱っこし続けてこられます。無理な姿勢で子どもを支える事もしばしばではないでしょうか。生活のリズムが夜泣きや授乳により乱され、慢性的な睡眠不足化になることも。これらのストレスからかみしめが増えてしまうことがあり、子育て中のお母さんの歯には大きい負荷がかかってしまいます。

柳美里さんが言ったように「口はその人の生活を語」ります。頑張っているお母さんは、奥歯も頑張っているんですね。
そんな訳で、子育て中のお母さまがたのお口には無意識に歯にかけている力が原因で、色々な問題が起こりやすい状態である事を知っておいてください。
私は歯科医院からお母さまを応援しています。いつでもご相談にいらしてくださいね。

引用:
柳 美里 『私の読書日記』(週刊文春、1995年7月14日号掲載)



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